大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和38年(む)394号 判決 1963年11月22日

被疑者 宮本重晴 外一名

決  定

(被疑者氏名略)

右被疑者両名にかゝる公職選挙法違反被疑事件に関し弁護人原秀雄、同有岡学から刑事訴訟法四三〇条一項による不服の申立があつたので次のとおり決定する。

主文

検察官は弁護人と被疑者両名との接見につき、その日時場所および時間を指定しない限り右接見を拒否してはならない。

理由

(本件申立の要旨)

一、検察官は身体の拘束をうけている被疑者両名と弁護人との接見を拒絶し、また、その日時・場所および時間の指定もしないでこれを制限しているから主文と同趣旨の決定を求める。

二、右申立が容れられないときは、予備的に前掲接見拒絶処分を取消し、更に接見の指定日時を昭和三八年一一月二六日午前九時から午後五時までの間各一時間づつと指定するとの決定を求める。

(当裁判所の判断)

一、一件記録によれば、本件弁護人らは被疑者両名との接見を拒絶されている一方、刑事訴訟法三九条三項の指定もなされていないことが明白である。

二、ところで同法三九条一項によれば弁護人と身体の拘束を受けている被疑者との接見は同二項による法令の措置および同三項による捜査の必要のためその日時・場所および時間の指定がない限り原則として無制限のものであると解すべく、右指定を待たねば接見ができないという筋合のものではない。したがつて検察官は上記指定をしない限り弁護人と被疑者との接見を阻止してはならない。

そして本件のような場合、法律に保障された弁護権の正当な行使を確保するためには刑事訴訟法四三〇条、三九条の趣旨に鑑み主文の如き決定をなし得るものと解する。

三、よつて弁護人の右申立は理由があるので予備的申立に対する判断は省略して主文のとおり決定する。

(裁判官 黒川正昭 浜田武律 磯部有宏)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例